【裾野伝説シリーズ】枕かえしの薬師堂

yakusi

裾野市各所には、昔ながらの伝説が残っています。
今回は、その中から“枕かえしの薬師堂”というお話をご紹介します。

枕かえしの薬師堂

むかし京都に天皇がおられたころ、京のまちを中心に官道が四方に走っていて、日本全国へ延びていた。それはいまの国道に似ているが、そのころは主なところに関所が置かれて旅人の取りしまりをした。

またいつも馬をおく駅があって、役所の知らせを伝えたり使いの役目などにあたっていた。

駿河の国(静岡県)にもいくつかの関や駅があった。西の方では島田(島田市)に駅が置かれた。
ところが東の方でも島田(裾野市)に駅を置くことにしたが、まぎらわしくなるので、
ここは伊豆半島に近いということで伊豆島田駅と呼ぶことにした。

それからというもの、この伊豆島田は宿場として多くの人びとが行ききしてにぎやかになっていった。

ここに薬師如来をまつるお堂があった。村に災難があったり、家の人が病気になったりすると、
人びとはこのお堂にお籠りをして願いごとをかなえてもらった。

そのようなとき人びとは、近くの川で体を清めてから三日三晩お堂に寝とまりして、
薬師さまにお祈りしたものである。ある日、村人が五人ほどお堂へやってきた。
「おや、きょうは五助もお籠りするんかのう」
「すちのお母あが、はやり病で寝込んでしまったんで、薬師さまにお願いするでさあ」
「そりゃあ、きのどくに、ちょうどいい、おらあといっしょにお祈りしよう」
かれらは唱えごとをいいながら、一心にお祈りした。
「やあ、疲れるものだなあ、これなら畑仕事の方がよっぽどいいな」
「五助、なにいいうか、おっ母さんの病気を治してもらいたくねえのか」
ほかの人にたしなめられながら、その日は夜をむかえた。

そこで、みなそれぞれ夜具(ふとん)をのべて寝ることにした。
「おい、みんないいな、薬師さまに足をむけて寝るんじゃねえよ」
と、年配の者が注意した。それを聞いた五助は、
「おいら、いつも西の方へ足むけて寝ているんだぜ、そうさせてもらおう」
といいながら、みんなと反対の方向に横になったかと思うと、そのまま高いいびきで眠りこんだ。
「五助さ、仏さまに罰があたらなければいいがのう」
みんな心配しながらも、寝こんでしまった。
「よう、だれか、おれのふとんの向きをかえたかな」
あくる朝、五助の大声でみんな目をさました。みると五助はみんなと同じように薬師さまに頭をむけて寝ているではないか。
「これはまた、ふしぎなこともあるもんだ」
「五助や、おまえ寝相がわるくて、夜中に向きをかえたんじゃあねえのか」
「いいや、ゆうべはぐったりでそれどころではなかったぜ」
「それもそうだがよ」
と、一同は、なにか浮かぬ顔をしていた。そうして二日目の夜になると五助は、
「ようし、そうならば今夜も試してみるとしよう」
といいながら、またまたみんなの止めるのもきかずに足をむけて寝てしまった。

そのつぎの朝、ふしぎなことにかれの頭が薬師さまの方にむいているではないか。
そこでみんなは、
「そうだ、きっと薬師さまがおまえの心得ちがいをさとしてくれているのだよ」
「五助、いいかげんにしなさいと、おっ母さんの病気はなおらないぞ」
と口ぐちにいわれ、三日目の夜はかれも素直に、みんなと同じように薬師さまに頭をむけて寝ることにした。

こうして、一同はやっとお籠りを終えると、すがすがしい気持ちで家へと帰った。
ふしぎなことに、五助の母親もやがて病気が治って、すっかり元気になった。

そこで親子は大よろこびで薬師堂へお参りにいき、上げものをしてお礼を申しあげた。
それからというもの、伊豆島田の人びとは、いっそう薬師さまへお参りにくるようになった。
そうして薬師さまから、いろいろご利益をさずかるので、そのことがだんだんあたりに知れていった。

ある日、一人の旅人が官道をやってきて、この噂を耳にした。
そこでわざわざ伊豆島田へ立ち寄った。

旅人は顔も手足も日焼けしてまっ黒であった。でも四十ぐらいの年かっこうであった。

お堂をたずねると、堂守が親切にお茶をすすめた。
「ありがたい薬師さまとお聞きしましたが、私も旅の無事をお願いしたいものです。ひと晩とめていただけましょうか」
「それはよいことです。きっと薬師さまおお守りがいただけるでしょう」
かれは旅人の頼みを心よく引きうけた。日中にあれほどにぎやいだ蝉の声も遠のき、夕暮れになると、お堂のまわりはひっそりとしずまりかえった。旅人は、
「しあわあせにも、評判の薬師さまのもとで一夜をあかすことができるなど夢のようだ。これも旅をしてきた甲斐があるというものだ」
といいながら、おだやかな仏さまのお顔を心ゆくまでながめてから、一心に旅の無事をお祈りした。

堂守りさんが夜具の用意をしてくれてあったので休むことにしたが、この旅人は何を思ったのか、
「おそれ多いことだが、かんべんして下さい。私も試してみたくなったのです」
そういって、足が薬師さまへむくようにふとんの向きをかえた。まもなくかれは旅の疲れがでて、朝までぐっすり眠った。

ふと目をさますと、驚いたことに旅人の枕が薬師さまのお座りになっている須弥壇にのっかり、それに頭をのせて寝ていたのであった。

旅人は思わずとび起きて、
「なんとお詫びしてよいものやら、お力を試そうなどとんでもない心得ちがいをいたしました。どうかお許し下さい」
と、その場にひれ伏してあやまった。

いつしかうしろに堂守が立っていて、にこにこしながらいった。
「ああ、きっと薬師さまもお許しになさるでしょう。旅の無事がいただけますよう、私も祈って上げましょうぞ」
かれは数珠をとり出して、経文を唱えながら拝んだ。

こうしたこともあってから薬師さまの評判がますます高くなり、遠くの方からもお参りにくる人が増えていった。そうして、人びとはこのお堂を「枕かえしの薬師堂」というようになった。

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